ラオスは「山の国」と言われるけれど、日本はもっと「山の国」だった

ラオス
奥多摩の鷹巣山からの山並み

森林率

ラオスに行ってきた。ラオスは「山の国」といわれる。

「森は山を育てるだけでなく、川を育てる。さらに、平野を育てて、海をも育てる。欠かせない存在である。」と改めて気づかされた。

普段山登りはするものの、関東平野に住んでいると山との距離感があり、そういう認識が薄れてしまう。

ラオスの「森林率」は69%である。南アジア・東南アジアでトップの値であり、「山の国」と言われるのも当然である。

ラオスは、西をメコン河、東をアンナン山脈の分水嶺にふちどられた山がちの国で、面積は日本の本州にほぼ等しい。熱帯アジアのなかでもとくに森に恵まれ、国土面積に占める森林面積の割合である「森林率」は2005年の時点で69%で、これはブータン(68%)やマレーシア(64%)、カンボジア(59%)を抜いて、南・東南アジアのなかでもっとも高い値である。国土面積の61%は二次林(原生林が伐採や災害によって攪乱された後、自然に、または人為的に再生した森林)となっている(FAO,2006年)。

<ラオスを知るための60章より>

一方、日本の森林率は68%とラオスとほぼ同じというデータがある。フィンランドとスウェーデンと同じレベルである。

自然林と人工林の比率

森林の細かな数字を見ていくラオスと日本の森林の違いが見えてくる。

大きな違いは、自然林と人工林の比率である。日本の山は自然林が多く、国土の39%が自然林である。一方、ラオスの自然林の割合は8%にしかすぎない。

森林以外自然林人工林(再生林)出典
ラオス31%8%61%ラオスを知るための60章
日本34%39%27%林野庁HP

自然林:人の手がほとんど入っていない森林のこと

人工林:人工林は計画的に植えられ、手入れをされた森林のこと

日本:人工林は、スギ、ヒノキ、カラマツなどの針葉樹が植えられていることが多い。

ラオス:人工林は、焼畑農業に使われた森林が植林や自然に生えてきた木々によって森林が再生する過程であったり、プランテーション(ゴム、バナナなど)や木材(チーク材)として利用するをために植生している森林などである。

ラオスでは、山腹や山の頂上付近まで少数民族が住んでいて、焼畑農業やプランテーションで活用している。

<ラオスの焼畑農場の様子>

<ラオスのゴムのプランテーションの様子>

ラオスは本州くらいの国土面積に750万の人々が、森林を活用して、暮らしていると言える。

一方、日本の山は急峻であり、手付かずの山が残っている。

ラオスと日本の課題

ラオスが今までのような生活を続けていれば、上手く森林を再生しながら焼畑農業などに活用して行ける。しかしながら、携帯やバイクが欲しいなど現金収入が年々欲しくなる環境。そのため、農作物をたくさん作って町に売って現金収入を得る。国も現金収入を得るために、プランテーションを拡大していく。「現金が必要な豊かな生活と森林の維持をうまくバランスとっていくこと」がラオスの課題である。

<森林が中国向けのドリアンを栽培する農場へ変わっていく>

一方、日本は「林業に関わる人の減少と高齢化による貴重な資源が活用されていない」ということが課題。また、高齢級(人工林の場合、林齢46~50年以上)の森林が多く、活用できる段階であるにもかかわらず活用できない。放置するのも問題がある。

山田哲哉さんの「奥多摩 山、谷、峠、そして人」の本で、昔は奥多摩の山の中にも多く暮らしていたと書かれてあった。奥多摩を歩いていると、廃村などの痕跡は見られる。日本人もラオスの少数民族のように山々で暮らす民だった。

ラオスに行って、「日本はもっと山の国なんだ」と思った。ただ、「日本の森林にも課題がある」と気づかされた。

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ラオスに一体何があったのだろうか?

村上春樹さんの「ラオスにいったい何があるというですか?」を読んでみた。

仕事の関係で、豪華なリゾートホテルに泊まっていた。さすがレベルが違う。それはさて置いておいて、凡人には表せないことを言語化してくれていて、共感できた。

「ラオス (なんか)にいったい何があるんですか?」というヴェトナムの人の質問に対して僕は今のところ、まだ明確な答えを持たない。僕がラオスから持ち帰ったものといえば、ささやかな土産物のほかには、いくつかの光景の記憶だけだ。でもその風景には匂いがあり、音があり、肌触りがある。そこには特別な光があり、特別な風が吹いている。何かを口にする誰かの声が耳に残っている。そのときの心の震えが思い出せる。それがただの写真とは違うところだ。それらの風景はそこにしかなかったものとして、僕の中に立体として今も残っているし、これから先もけっこう鮮やかに残り続けるだろう。

それらの風景が具体的に何かの役に立つことになるのか、ならないのか、それはまだわからない。結局のところたいした役には立たないまま、ただの思い出として終わってしまうのかもしれない。しかしそもそも、それが旅というものではないか。それが人生というものではないか。

『普段気づかないことに気づかせる。そして、考えさせる。』ということがラオスから持ち帰ったものかもしれない。

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