【本日の記録】
* 天気: 曇りのち晴れ
* 歩行距離: 25.6km(※GPSの実測値)
* 累積標高: 上り 1789m / 下り 1721m(※GPSの実測値)
* 時間: 7時間52分(活動7:01、休憩0:51 ※実測値)
* 困難度: ★★★★★(5段階評価)
* 宿泊地: 植村旅館(12番焼山寺を下った遍路道沿い、神山町の宿)
* 参拝した札所と区間距離(ガイドブック参考):
旅館吉野 〜 第11番 藤井寺:約0.7km
第11番 藤井寺 〜 長戸庵:約3.2km
長戸庵 〜 柳水庵:約3.4km
柳水庵 〜 一本杉庵(浄蓮庵):約2.2km
一本杉庵 〜 第12番 焼山寺:約4.1km
第12番 焼山寺 〜 植村旅館:約10.4km
(※設定ルートの合計目安:約24.0km)
1. 「遍路ころがし」への挑戦
朝、旅館吉野のおいしい朝食で腹ごしらえをし、女将さんから昼食用の「おにぎり弁当」を受け取る。これが今日の命綱だ。

「行ってらっしゃい、気をつけて。植村旅館は遠いですよ」という温かい送り出しを受け、決意を新たに宿を出た。
まずは昨日打った11番 藤井寺へ。
必ず前日に参拝しなければならない。今年から納経所の開く時間が朝8時からになったため、当日参拝だとそれまで待たなければならないからだ。
本堂の脇にある登山道が、焼山寺への入り口だ。
ここから約13km、標高差約700mを一気に登る「遍路ころがし」。
「お遍路さんが転がり落ちるほど険しい」と言われる道だ。バックパックのベルトを締め直し、一礼して山道へと踏み入った。

2. 果てしない登り坂と、一歩への集中
昨日の雨の影響か、木の根や岩が湿っていて滑りやすい。一歩一歩、足場を確認しながら慎重に進む。
「水大師」の先で、トレイルが少し崩れている箇所があった。昨日宿で「路肩が崩れて狭くなっているから注意するように」と説明を受けていた場所だ。慎重に通過する。

急登をこなし、最初の休憩ポイント「長戸庵」へ。
この少し先、登ったところに絶景ポイントがあった。昨日、雨の中を渡った吉野川と、広大な徳島平野が一望できる。

そこからさらに進み、「柳水庵」でリュックを下ろして最初の本格的な休憩をとった。ここにはトイレもある。


普段の山登りレベルのトレイルではあるが、10kg近い荷物が肩に食い込む。
ふと、残りの1000km以上という途方もない距離を考えてしまい、不安が押し寄せてくる。あまり先のことを考え過ぎると、それがストレスになり疲れを倍増させる。「あと何キロあるのか」「いつ着くのか」。そんな雑念が頭をよぎる。
「次の札所まで」いや、「ただ目の前の一歩を踏み出すこと」だけに集中すべきなのかもしれない。
「今、ここ」に集中する。これこそが、仏様の説いている生き方であり、修行なのかもしれないと感じた。
さらに登り、「一本杉庵」へ。
ここには弘法大師が休んだと言われる巨大な杉の木が、圧倒的な存在感で立っていた。その根本にある弘法大師像に手を合わせる。現在の標高は約760メートルだ。

3. 天空の集落と、異国の巡礼者
一本杉庵の先で、山肌に張り付くような集落を発見した。「天空の集落」マニアにはたまらない光景だ。


近くには釣りができそうな綺麗な渓流も流れている。もうすぐ渓流釣りの解禁時期だな、とふと思う。しかし、お遍路中は「殺生」をしてはならない。
「キャッチ&リリースなら良いのかなあ?」
そんな邪念が頭をよぎるが、そのまま歩を進めた。

道中、昨晩知り合いになったアメリカ人の男性に追いつく予定だったのだが、姿が見えない。どこかで追い抜いてしまったのだろうか?
彼はユタ州から来ていて、今回の来日は2度目だという。「ユタには雪山も砂漠もあるんだ」と故郷の良さを語ってくれた彼は、約60日かけて四国を一周する計画らしい。「途中で電車やバスも使うかも」と笑っていたが、異国の地でのチャレンジャーだ。
ただ、歩いていて感じるのは、熊野古道などに比べて外国人の割合はまだ少なく、英語などの受け入れ体制も整っていないということ。まだまだ「日本人のための四国遍路」という印象が強い。これから年々、この道の雰囲気も変わっていくのだろうか。
4. 天空の霊場、第12番 焼山寺
ルートはずっと登りというわけではなく、幾度ものアップダウンを繰り返す。
ガイドブックには「3つのピークを越える」とあったが、細かいアップダウンが多すぎて、どれがそのピークなのかよくわからなかった。
宿を出てから約4時間半、ついに第12番 焼山寺に到着。
標準タイムよりかなり早く、どうやら自分は「健脚レベル」のようだ。

標高約700m。「四国の高野山」とも称されるこの場所は、樹齢数百年を超える巨大な杉並木に囲まれ、ちょうど霧の中に包まれていた。下界とは隔絶された、神聖な空気が漂っている。

本堂と大師堂での納経を済ませ、納経所の近くで休憩。ここで、旅館吉野で作ってもらったおにぎり弁当を頂いた。山越えの後の冷たいおにぎりが、最高に美味しい。
5. 膝に来る下り、そして植村旅館へ
焼山寺を打ち終えても、今日の行程はまだ終わらない。
多くの人は、焼山寺から少し下ったところにある「すだち庵」などに泊まるようだが、明日の行程(徳島市内まで歩くこと)を考えて、今日はもう少し先まで頑張ることにした。
今度は山を降り、さらに一つ峠を越えて、今夜の宿まで約10.4kmの道のりだ。
登山でよく言われることだが、実は「下り」の方が脚にくる。金剛杖をうまく使い、腿や膝への負担を逃がしながらゆっくりと下っていく。
その道中で、不思議な出会いがあった。
突然、目の前に一羽の孔雀のような山鳥が現れたのだ。なぜこんな山道に?

驚いていると、山鳥は逃げるどころか、私の前をトコトコと歩き始めた。そのまま約500メートルほど、まるで道案内をするかのように一緒に歩くことになった。
試しに私がペースを上げて追い抜こうとすると、「クワッ!」と威嚇して怒る。あくまで自分が前を歩きたいらしい。
時折、後ろを振り返っては、私との距離を確認し、つかず離れずの一定の距離を保って先導してくれる。
その背中を見ていると、ふと亡き父のことを思い出した。
父も歩くのが好きな人だった。「ほら、遅れるなよ」と父が姿を変えて、疲れが出てきた私を励まし、先導してくれているのではないか。
そんな不思議で温かい感覚に包まれながら、孔雀との二人旅を楽しんだ。
ちょくちょく現れる里山の風景を通る。人の営みと自然が調和した、とても好きな風景だ。可愛らしさのある集落が見えてくると、その景色に感動する。



ようやく森を抜け、今日の宿「植村旅館」に到着。
歴史を感じさせる、趣のある佇まいの宿だ。部屋も日当たりが良くて暖かい。


お風呂に浸かって、洗濯もあっという間にしてくれて、助かった。お食事もボリュームたくさんで美味しかった。

最大の難所「遍路ころがし」を、なんとか越えることができた。
歩いてみて感じたのは、自分はどちらかと言うとアスファルトの平地歩きよりも、こうした山歩きの方が慣れているし、疲れにくいかもしれないということ。
とはいえ、疲労は確実にある。歩きの筋力がもっとついていけば良いなと願いつつ、今日は早めに体を休めよう。
【ヤマレコの記録】
詳細なルートの参考用として、ヤマレコの記録をつけておきます。


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