Amazon Kindle unlimitedをサブスクリプション(月額980円)しており、期間によって無料で読める本が変わっていく。好きな作家の山﨑豊子さんの「花のれん」が無料だったので、読んでみた。作家として2作目の作品で、直木賞を受賞した小説。初期の作品を読むのは初めてで、今までは超大作の小説のみ読んでいた。
今までは読んだのは、
- 「大地の子」、「二つの祖国」、「不毛地帯」の戦争関係の小説
- 「華麗なる一族」、「沈まぬ太陽」の企業関係の小説
- 「運命の人」の政治・外交の小説
だった。
山崎豊子さんの写真を見ると、大阪の普通のおばちゃんに見えるが、圧倒的な取材力で踏み込んだ社会派小説を書く。中国残留孤児を主人公とした「大地の子」の取材では、当時の胡耀邦総書記のお墨付きをもらって取材をしている。そして、外国人に未開放の農村の貧農家庭や労働改造所など普通許可されないようなところまで踏み込んで取材をしている。
なぜ胡耀邦総書記のお墨付きをもらえたかの経緯も興味深い。「よい小説を書く」という信念が人の心を揺さぶる。
胡耀邦さんにお会いしたとき申し上げたことは、「小説はイデオロギーではありません。したがって日中友好バンザイの小説は書けません。書いた結果が日中友好に役立てば、と思います」ということでした。即座に胡耀邦さんは「中国のいいところばかりではなく我が国の遅れた部分も久点も書いて結構です」と言われました。またその時、胡耀邦さんは「中国の欠点を私に言ったのは、あなたが初めてだ」とおっしゃんたんです。
(山崎豊子自作を語る[作品論]より)
また、山崎さんの小説に対する思いは、
「小説というものは、うまくて、面白くて、そして読後に感銘を与えるものでなければならないと思う。そのためには、盆栽づくりのような巧さ、本来ならまっすぐ伸びる枝ぶりを、作者が自在に作り変え、その結果、読者にとって絵解きのような面白さを味って貰え、しかも、読後感に人生上の強い感銘を与えることができたとしたら、それはすばらしい小説だといえよう。」
(山崎豊子自作を語る[人生編]より)
とのこと。本当に、今まで読んだどの小説も人生上の強い感銘を受ける。
ノウハウ本を読むことも良いけれど、これらの山崎豊子さんの作品を一作でも読んだ方が良いと思う。いずれも大作で読み始めるには覚悟はいる。戦争の悲惨さ、人間に湧き上がる様々な感情(葛藤、怒り、失望、嫉妬・・)、そして人間の本質に関わるような哲学的なことまで考えさせられることがたくさんある。
「花のれん」
「花のれん」は大阪船場の話なので、最初は商売人(呉服屋)の話と思った。随分といい加減な夫を支える奥さんが、あれよあれよと落語や漫才といった商売で成功していくという話。主人公は吉本創業の創設者の吉本せい。今まで
吉本興業の創設者については知らなかった。通天閣(今の通天閣は戦後に建て替えられた二代目。戦時中に鉄などの物資不足で初代通天閣は解体された)を購入していたというのもびっくりだった。
自分は大阪出身なので、両親と祖父母を見ていて理解できるけど、大阪の人は「かねかね」というけれど、「人情と大切にして、損して得とれ」というタイプ。当然、主人公の河島多加は、まさにそのタイプ。
「表見は愛想のええ普通の御寮人さんやけど、芯は牛車を牽っ張るみたいに辛抱強うて、その上、きつい商いの才覚を持ってはります」
というのが番頭のコメント。自分としては良く理解できる「大阪人の商いの才覚」である。大阪を異文化と思う人はぜひ読んでほしいと思う。
この小説は、NHKの朝ドラで2017年にドラマ化されていたとのこと。主人公は北川景子さん。小説を読んだイメージとは随分違った。小説では、小柄で芯は牛車を牽っ張るみたい辛抱強いとあった。北川景子さんは、大阪弁で言えば、「シュッとしてはる人」。「シュッとしてはる人」とは、スタイルが良いとか背が高いという意味だけでなく、立ち振る舞いもスマートという意味。ちょっとイメージと違った。個人的には伊藤沙莉さんの方がイメージにあった。
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