残って欲しい日本の風景「天空の集落・赤沢宿」|江戸時代の面影を残す宿場町

南アルプス

残ってほしい日本の風景、天空の集落「赤沢宿」

山梨県早川町。日本で最も人口が少ない町(891人:2025年12月1日現在)のひとつに、時が止まったかのような「天空の集落」があります。その名は「赤沢宿」です。

七面山の表参道を登っていると、眼下に山肌へへばりつくようにひっそりと佇む赤沢宿が見えてきました。「こんな所に小さな集落があるんだ」と、思わず愛おしさを感じるような光景でした。

江戸時代の街道の風情を残す石畳が、集落の最上部まで続く赤沢宿。そこには、まさに「残ってほしい日本の風景」がありました。今回は、この天空の集落の魅力をご紹介します。

※七面山の登山や敬慎院への宿泊については、別記事『七面山・敬慎院の宿泊記|山門の「額縁富士山」と御来光の絶景』にまとめています。

身延山と七面山を結ぶ、祈りの宿場町

赤沢宿は、日蓮宗の聖地である「身延山」と「七面山」を結ぶ参詣道にある宿場町です。標高が高いため、気象条件によっては集落の下に雲海が広がり、まさに「天空の集落」と呼ぶにふさわしい神秘的な姿を見せてくれます。

現在は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、江戸時代から続く木造建築が峻険な地形に合わせて幾重にも重なり合う姿は圧巻です。日帰りの散策でも、その独特な空気感は十分に味わえます。ぜひ、高い場所ならではの視点を楽しみながら歩いてみてください。

早川町観光協会HPより
宿の駅「清水屋」

集落の中ほどにある「清水屋」は、江戸時代の旅籠を改修した休憩処です。

 ここの縁側は、まさに赤沢宿の「特等席」と言えます。磨き上げられた床に座り、目の前に広がる南アルプスの山々と、深い谷を見渡す時間は格別です。

※訪問した1月は、残念ながら冬季休業中でした。

空へ続く石畳の坂道と「妙福寺」

集落を貫くメインストリートは、美しい石畳の急坂です。この道を歩くと、江戸時代にタイムスリップしたような感覚になるほど、昔の風情を残した道です。観光化されておらず、華美な感じがないのも素敵でした。

妙福寺は、前日に宿泊した七面山・敬慎院と深い繋がりがありました。

1297年(永仁5年)、七面山に登ろうとしていた日朗上人一行が宿泊したのがこの地です。かつては真言宗の「妙福庵」でしたが、この縁で日蓮宗に改宗されたと伝えられています。

また、七面山の鍵は代々この妙福寺で管理されており、新任の別当職はまず妙福寺に参拝して鍵を受け取ってから着任する習慣が今も続いています。そのため、親しみを込めて「鍵取り妙福寺」とも呼ばれています。

 坂の中腹にある「妙福寺」まで、息を弾ませながら登ったら、さらに集落の上まで登りきってみてください。坂を登りながら振り返ると、重なり合う家々の屋根越しに山々が広がり、集落全体を見渡すことができます。

歴史の証人「講中札」を巡る

各民家の軒先も歴史を感じることができます。

  「〇〇講」と書かれた古い木の板(講中札)が、今も大切に掲げられています。かつてここが、険しい山道を越えてきた旅人たちにとって、空に近い安らぎの場所だったことを教えてくれます。

今も時を刻む「江戸屋旅館」

かつて数十軒あった旅籠も、現在、宿泊できる宿として営業を続けているのは主に「江戸屋旅館」のみとなりました。

 江戸屋旅館: 軒先にぎっしりと並ぶ講中札が、この村の歴史の深さを物語ります。夜になれば満天の星が降り注ぎ、朝は鳥の声で目が覚める。そんな「天空の宿」ならではの体験が待っていると思います。

なぜ、この風景を「残したい」のか

私が赤沢宿を「残ってほしい日本の風景」と強く願う理由。それは、厳しい自然環境の中にありながら、今も人々がこの場所を愛し、暮らし続けているからです。歴史ある参詣道の宿場町として、そして日本人の心の原風景として、この美しさが続いていくことを願ってやみません。


赤沢宿への行き方

1. 赤沢宿へのルート(車での行き方)

主なルートは、「下部温泉早川IC」から約30分。県道37号線(南アルプス公園線)で西に向かいます。南アルプスプラザ総合案内所の少し手前を脇道になります。脇道に入ると非常に狭い山道を10分程度走ると赤沢宿に着きます。

【重要】山道の運転について:県道37号線から赤沢宿へ向かう脇道に入ると、道幅が非常に狭い「細い山道」が続きます。

  • 勾配が急で、対向車とのすれ違いが困難な箇所もあります。
  • 運転に自信がない方や大型車の方は、速度を十分に落とし、カーブミラーを確認しながら慎重に進みましょう。
  • 冬場は路面凍結の恐れがあるため、スタッドレスタイヤ等の装備が必須です。

2. 駐車場の情報

赤沢宿の集落内は、道が狭くて、車で回ることができません。集落の中にある観光客用の駐車場を利用しましょう。

  • 赤沢宿第2駐車場:集落の上部にある主要な駐車場です。ここに車を停めて、ここから先は徒歩で石畳の坂道を歩いていくことになります。
  • 赤沢宿公民館駐車場:少し離れた場所にありますが、混雑時には予備として検討してください。

3. 公共交通機関を利用する場合

JR身延線「身延駅」より、早川町乗合バス(奈良田行き)に乗車。「赤沢入口」バス停で下車。

注意: バス停から集落までは、徒歩で約30分の急な登り坂となります。体力に自信のない方は、バス停近くにあるタクシー会社の利用をおすすめします。

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