電車旅⑤ 「残ってほしい日本の風景」木次線と出雲坂根駅の焼き鳥屋

中国地方

はじめに

木次線(きすきせん)は、島根県松江市の宍道駅から広島県庄原市の備後落合駅を結ぶ、JR西日本の路線です。

距離81.9kmを約3時間かけて走破します。JR西日本で最高地点を通る西日本屈指の山岳路線です。しかも、宍道駅から備後落合駅まで通して走る列車は1日2本しかありません。

山岳路線のゆえに、出雲坂根駅付近では3段のスイッチバックがあり、Zの字を描くような方向転換を繰り返します。

実際に乗車すると、それ以上の予想していなかった体験もしましたので、紹介します。

「残ってほしい日本の風景」木次線・出雲坂根駅の焼き鳥屋

無くなってしまいそうな「残ってほしい日本の風景」に出会いました。

いつかは無くなってしまうかもしれない。だけど「残ってほしい」という思いを込めて、記録を残したいと思います。

廃線の危機にある木次線

魅力あふれる路線ですが、経営的には非常に厳しい側面があります。

特に、出雲横田駅 〜 備後落合駅の間は、利用者が極めて少ない「超閑散区間」です。

2024年度の輸送密度(1日1kmあたり利用者数)は、宍道~出雲横田間が212、出雲横田~備後落合間が23と公表されています。観光列車の「奥出雲おろち号」が2023年に老朽化のため運行を終了した影響も大きいです。

さらに、冬場は積雪が非常に多いため、数ヶ月にわたって運休(バス代行)になることも珍しくありません。

「木次線利活用推進協議会」という活動も紹介しておきます。利用者が増えて、木次線が存続して、さらに活用されていくことを願っています。

木次線ポータルサイト | 木次線利活用推進協議会
木次線ポータルサイト

そんな私も2週間前(20205年12月6日)の朝日新聞の記事、原武史さんが書いた「宮本常一と木次線」を読んで木次線の存在を知りました。少しでも木次線の魅力を知ってもらい、ぜひ木次線に乗ってもらいたいです。

出雲坂根駅にある焼き鳥屋

もうひとつ「残ってほしい日本の風景」は、出雲坂根駅にある焼き鳥屋です。名前は「延命の里」といいます。

停車時間が10分程度しかなく、せわしなく焼き鳥を購入しました。焼き鳥だけでなく、季節に合わせ色々なものを作っています。冬で、おでんがあり、本当に美味しそうでした。焼き鳥は炭火で焼いています。タレと塩(コショウ入り)があります。モモ肉だけでなく、つくねと皮もあり本格的です。

おにぎり、ビール、日本酒も売っており、購入したつまみで、楽しい呑み鉄をすることができます。毎日営業しているわけではないので、購入できるかは運次第かもしれません。

無くなってしまうかもしれないけど、「残ってほしい日本の風景」です。

「木次線」乗車記

それでは「木次線」乗車記です。

この日はあいにくの雨でしたが、気温が高くて助かった。翌日から寒波が来て、運休の可能性もあった。

宍道駅11時17分発で、備後落合駅到着が14時21分着。その後、芸備線に乗り換えるため、昼食を準備しておかなければならないと思い、米子駅で米子あんぱんなどを購入。

宍道駅では30分ほど乗り継ぎの待ち合わせはあったが、開いているお店はなかった。郵便局があるくらいだった。

列車は、カーブを曲がりながら少しずつ標高を上げていく。綺麗な棚田も見られるようになってくる。西日本屈指の山岳路線というけれど、山の中というよりは里山の中を走る時間が長い。

12時を過ぎたので、米子駅で買ったちくわと日本酒「千夜むすび」をちびちび呑み始めた。

この時は、出雲坂根駅で焼き鳥やアルコールを購入できるとは知らず。乗客の多くは、木次線に乗りたくてやってきた人たち。サンドイッチなど昼食を食べ始める。ロングシートなので、少したべにくさはあるが、車内は何となく一体感があった。

一緒の列車に乗っている人が、亀嵩駅でそばの配達をしてもらっていた。亀嵩駅の「扇屋そば」に、事前に注文しておくと、弁当そばを列車まで届けてくれるというサービスある。

本格的な出雲そば。せっかく木次線に乗るなら注文するのをお勧めします。

出雲横田駅で、2両編成の後ろを切り離す。先頭車両のみで備後落合に向かう。後ろの車両は、宍道駅に戻っていく。ここまでは地元の人も乗っているが、これ以降はほぼ全員が観光客となった。

出雲横田駅は、「社殿造りの駅舎」で、出雲大社を模した「しめ縄」がある。このあたりは、たたら製鉄」の文化が息づき、徒歩圏内には「奥出雲たたらと刀剣館」もある。また、駅から数キロ歩けば棚田が綺麗に見えるスポットもある。

この駅の周辺には宿もあり、1泊することも考えたが、翌日まで雨が続くので、備後落合に向かうことにした。

国内に数あるスイッチバックの中でも珍しい3段式スイッチバックが木次線にある。3段式スイッチバックは出雲坂根駅(標高564m)から三井野原駅(標高726m)までの標高差162mを登るために設置されている。

スイッチバックの対応、あるいは線路の点検なのためなのか、ワンマン運転だけど3名体制で運転されていた。

スイッチバックで高度を上げると、列車から見る車窓からの眺めは絶景になる。「奥出雲おろちループ」という螺旋状に高度を上げる道路が見える。

「奥出雲おろちループ」の次は、赤い橋も見えてくる。天気が良ければ、三井野原駅で下車し、この道路を歩いて降りて、出雲坂根駅から次の電車で備後落合に向かうことも考えていた。

峠を越えると下り坂になり、木次線の終点の備後落合駅に到着する。

備後落合駅は、3つの路線が落ち合う駅。木次線と芸備線(上り:岡山県新見)と芸備線(下り: 広島県三次)の乗り換えターミナル。そう聞くと、大きな駅と思われるが、現在は「日本屈指の秘境ターミナル駅」として知られている。かつては「山陰と山陽を結ぶ交通の要衝」として100人以上の職員が働くほど賑わっていたそうだ。

備後落合駅には、有名な人がいる。それは、元国鉄マンで、ボランティアガイドを務める永橋則夫さんである。廃線危機にあるJR芸備線と木次線の存続を願い、駅を訪れる乗客に詳しい説明や案内を行い、地域活性化に貢献する「備後落合駅の顔」として知られている。

永橋さんが作ったジオラマで、昔の備後落合駅の様子を教えてもらった。乗り換え時間が15分くらいしかなく、ゆっくり聞くことができなかったのが残念だった。

駅の向こう側にあるホーム。ジオラマをみると屋根もあって立派。その奥側には円形のターンテーブルがあり、汽車の向きを180度回転させていたと永橋さんに教えてもらった。

昔の栄えた名残で駅の規模は大きい。芸備線の登りと下りが入線してきた。これで、自分が乗ってきた木次線と全ての列車が揃って、この瞬間の駅は賑わっていた。

備後落合駅から芸備線の下りで新見まで行って、姫新線に乗り換え「西の小京都」と言われる津山で宿泊した。

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