熊のいない伊豆で没頭する渓流釣り
中伊豆を流れる狩野川の上流へ、アマゴを狙って渓流釣りに行ってきました。
伊豆エリアの渓流釣り最大の魅力、それは「熊が生息していないこと」です。熊を気にせず、安心して釣りに没頭できるのは釣り人にとって本当にありがたい環境です。
「伊豆」といえば海のイメージが強いかもしれませんが、実は非常に山深い地域でもあります。日本百名山の一つである「天城山」を擁し、最高標高こそ1,405mと高くはないものの、海から一気に立ち上がる地形のため傾斜が急で、山岳渓流のエリアもあります。
伊豆半島の中央部を北流する「狩野川」は、日本屈指の鮎釣りの聖地として全国にその名を知られています。また、上流や各支流は豊かな渓流釣りのポイントとなっており、美しい朱点をもつ「アマゴ」が狙えます。
都心からのアクセスが良く、四季折々の自然と豊富な温泉に恵まれているため、「釣り+温泉旅」を満喫するのに最適なエリアです。
今回は、釣りの師匠である高校の同級生たちといつもの3人組での釣行です。 三者三様のスタイルで、師匠たちは「フライフィッシング」と「ルアーフィッシング」。そして自分は、「登山+釣り(源流釣行)」のスタイルを目指しているため、「テンカラ釣り」で挑みます。
前日の雨と濁流、そして美しいわさび田へ
前日の夜から降り始めた雨が上がらず、目的地である湯ヶ島に到着した時点でも雨があがらず。湯ヶ島付近の狩野川は、まるでコーヒー牛乳のような激しい濁流になっており、とても竿を出せる状態ではありませんでした。
そこで、少しでも状況が良いと思われる上流域へ移動。濁りが多少落ち着いたポイントを見つけ、入渓して釣りを開始しました。
まずヒットさせたのは、ルアー釣りの師匠。15cmほどの小型サイズですが、見事にアマゴを釣り上げます。これで無事に全員ボウズを回避。続いて自分も立て続けに2匹のアマゴをキャッチできました。こちらも最大15cmほどと控えめなサイズですが、いかにも魚が居つきそうな好ポイントからしっかり応えてくれました。


釣りの合間に上流へと進んでいくと、美しい「わさび田」に出会えるのも伊豆の渓流ならではの素晴らしさです。奥多摩などのわさび田と比べてもスケールが大きく、その圧倒的な景観には目を奪われます。わさび田の近くでコーヒーを淹れ、のんびりと昼食タイムを過ごしました。


結局この日は小さなアマゴしか釣れませんでしたが、大自然の中で竿を振る時間は最高の癒やしです。
※ちなみに宿のご主人によると、「今年は鮎も小さめのものしか釣れず、塩焼きにできるサイズが少ない」とのことでした。
源泉掛け流しの宿「温泉民宿 しきや」に宿泊
今回の宿は、ハイキングや釣りの拠点にぴったりな「温泉民宿 しきや」さん。 湯ヶ島の狩野川沿いにあり、鮎釣りのシーズンには多くの釣り師が集まるそうです。なんと宿の目の前を流れる川でも鮎が釣れるとのこと。

東京は連日の猛暑ですが、川沿いの湯ヶ島は風が通り抜けてとても涼しく、夜はエアコンなしで快適に過ごせました。身体に優しい天然の涼しさです。
この「涼と静寂」を求めて、かつて川端康成が長逗留し執筆活動に励んだのも納得できます。
【川端康成と湯ヶ島・『伊豆の踊子』の深い関係】
文豪・川端康成は大正時代から昭和初期にかけて湯ヶ島温泉をたびたび訪れ、宿に長期滞在しながら執筆を行いました。名作『伊豆の踊子』は、彼が旧制第一高等学校(現・東京大学)時代に実際に伊豆を旅した体験をもとに執筆された作品です。その執筆拠点となった歴史的旅籠「湯本館」は、今回宿泊した「しきや」のすぐ隣に位置しています。湯ヶ島の清流のせせらぎや静寂な環境が、名作を生み出すインスピレーションを与えました。
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「しきや」にチェックイン後、夕食まで少し時間があったので目の前の川で竿を出してみました。

水面ではたくさんの魚がぴょんぴょん跳ねており、「もしかしたら毛鉤で鮎が釣れるかも?」と期待しましたが、かかったのは10cmほどのウグイ(あるいはカワムツ)。それでも、宿のすぐ目の前にある美しい渓流で気軽に竿を振れるのは、釣り人にとってこの上ない贅沢です。

お部屋は3人1部屋で、6畳と8畳の間仕切りを外した14畳のゆったりとした部屋を用意していただきました。朝晩の2回、自慢の源泉掛け流し温泉に浸かり、川のせせらぎを聞きながら美味しい料理とお酒を堪能する……まさに至福のひとときです。


夕食は、新鮮なお刺身、金目鯛の煮付け、鮭とホタテと野菜の焼き物、茶碗蒸し、手羽元、小鉢2品と、品数豊富で目にも嬉しいラインナップ。伊豆の山海の幸がずらりと並びます。
ご飯は伊豆産の「にこまる」というお米でした。お米の品種「にこまる」とは、おいしくて笑顔がこぼれること(ニコニコ)と、粒が丸々と大きく良いこと(丸)から名付けられたブランド米です。暑さに強く、近年は西日本や伊豆地方などで広く栽培されています。一粒一粒がしっかりしていてモチモチとした食感があり、クセのないすっきりとした甘みが特徴です。主張しすぎない上品な味わいのため、刺身や煮魚などのおかずの味を一層引き立ててくれます。

冷酒を注文したところ、伊豆唯一の造り酒屋で修善寺にある万大醸造で仕込まれた「伊豆湯ヶ島 民宿 しきや」のオリジナルラベルが貼られた特別なボトルが登場。すっきりとした味わいのお米「にこまる」と地元のおつまみ、そして地酒の相性は抜群でした。

翌朝の朝食は、伊豆の定番「アジの干物」。目の前で香ばしく焼き上げ、ホクホク・アツアツの状態で美味しくいただきました。

宿の目と鼻の先にある共同浴場「河鹿の湯」
宿のすぐ近く、川のほとりにレトロな共同浴場「河鹿の湯」があります。 加水・加温・循環消毒を一切行わない「源泉100%かけ流し」の新鮮なお湯が自慢で、温泉好きの間でも評価の高いスポットです(入浴料:大人400円/地元の方は無料)。地元の方のお風呂代わりにもなっており、地域の生活に溶け込んだ温かい雰囲気があります。

浴室の中央には、ノスタルジックなタイル張りの小判型湯船がポツンと1つ。大人3〜5人が入ればいっぱいになるこじんまりとしたサイズ感です。 湯船の端には、トレードマークである「カエルの置物」の湯口がちょこんと座っており、その大きな口から地下水のように新鮮な温泉がすごい勢いで注ぎ出されています。
窓を開けると、すぐ下を流れる狩野川の美しい景色、爽やかなせせらぎ、そして心地よい川風をダイレクトに感じられます。 なお、壁際にカランはありますが、シャンプー・石鹸・ドライヤーなどの備品は一切ありませんので、訪れる際は洗面道具を持参するのがおすすめです。
朝の清々しい空気の中で「湯道」を散策
翌朝は、湯ヶ島温泉の「湯道」を散策しました。 「湯道」とは、かつて地元の人々が川原の共同浴場に通うために歩いた、渓流沿いの散策路(1周約30〜40分)です。川端康成をはじめとする文豪たちも愛した小径で、歴史と豊かな自然を感じながら歩くことができます。

途中で見つけた『伊豆の踊子』のデザインマンホールに気分が高まります。

格式高い高級旅館「落合楼」の脇を通り、階段を下りて川原へ。ここ一番の見どころが「男橋」と「女橋」です。本谷川に架かる男橋と、猫越川に架かる女橋という2つの美しいアーチ橋を渡り、2つの川が合流して「狩野川」となる素晴らしいロケーションを眺めることができます。川沿いには川床を備えた旅館もあり、「あんな場所で食事を楽しめたら素敵だな」と夢が広がります。



さらに青々とした緑に包まれた道を進むと、名作『伊豆の踊子』が執筆された老舗温泉宿「湯本館」や、ひっそりと佇む川端康成の文学碑に行き着きます。文豪が歩んだ歴史に思いを馳せる、素晴らしい朝の散歩となりました。
おわりに
今回の旅は、激しい濁りというあいにくのコンディションからのスタートでしたが、仲間とともに美しいアマゴに出会え、伊豆の豊かな自然に包まれた素晴らしい釣行となりました。
都心の喧騒と猛暑を忘れさせてくれる湯ヶ島の涼やかな気候、せせらぎの音を聞きながら浸かる極上の温泉、そして地元の恵みが詰まった温かい料理。「温泉民宿 しきや」さんで過ごした時間は、日頃の疲労をじんわりと解きほぐしてくれました。
「釣る・食べる・浸かる・歩く」のすべてが揃っている中伊豆・湯ヶ島エリア。熊の心配もなく安心して自然と戯れることができるこの場所は、渓流釣りと温泉旅を愛する人におすすめしたいスポットです。
次回はぜひ、サイズアップしたアマゴを目指して、再びこの清流に竿を振りに行きたいと思います。




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