【富士登山ルート3776】1日で登頂!でもお勧めは1泊2日or2泊3日?登頂記&ルート案内

歩く旅

はじめに

海抜0メートルの駿河湾から、標高3,776メートルの富士山頂(剣ヶ峰)へ。自分の脚だけで標高差3,776mを登りきる究極の「Sea to Summit」、それが富士登山ルート3776です。

私は2023年の夏、このルートに挑戦しました。東京駅から早朝のこだま号に乗車し、午前8時前にJR東海道線の吉原駅から歩き始め、日付が変わる直前に剣ヶ峰へ到達することができました。

後日、富士市より「富士山登山3776の達成証」をいただき、手元に届いた立派な賞状を見ると、やはり嬉しいものです。

バッジも同封されていました。2023年は世界遺産登録10周年記念でデザインが異なっていたようです。日常生活で賞状をもらう機会はめったにありませんので、ぜひチャレンジしてみてください。

しかし、実際に歩き切って感じたのは「これは決して万人には手放しでお勧めできる日程ではない」ということです。

本記事では、海抜0mからの1日富士山登頂記をお届けするとともに、これから挑戦する方が安全に楽しむための推奨スケジュール(1泊2日/2泊3日)やルート攻略法を解説します。なお、体力に自信のない方向けに、富士市では3泊4日を推奨しています。

今年の富士登山シーズンは終了しましたが、海から富士山を登りきる達成感は半端ではありません。来年に向けての大きな目標にしてみるのはいかがでしょうか?

富士登山ルート3776とは

「富士登山ルート3776」は、静岡県富士市が設定・推進しているチャレンジャー向け登山ルートです。詳細な情報は、富士市の公式ホームページ( https://route3776.jp/ )に詳しく掲載されています。

  • スタート地点: 富士塚(吉原駅から徒歩10分)または、ふじのくに田子の浦みなと公園
    • (1)富士塚: 在来線のJR吉原駅から歩いて10分ほどと、アクセスの良さが特徴の1つです。
    • (2)ふじのくに田子の浦みなと公園: 新幹線のJR新富士駅からタクシーで10分ほどの場所にあります。展望施設「富士山ドラゴンタワー」は、高さ37.76mと富士山の100分の1モデルになっており、富士市の街と富士山を一望できる人気の絶景スポットです。
  • ゴール地点: 富士山頂・剣ヶ峰(標高3,776m)
  • 総距離: 約42km
  • 標高差: 3,776m

【賞状(達成証)をもらうためにやること】

富士市から達成証や挑戦者の証となるゼッケンをもらうには事前の準備が必要です。事前に公式サイトからパンフレットや案内資料を送付してもらいましょう。

なお、現在のチェックポイント通過証明は、紙のスタンプではなく「ヤマスタ」アプリを使用します。手順は以下の通りです。

  1. スマートフォンに「ヤマスタ」アプリをダウンロードする。
  2. アプリTOP画面の「スタンプラリー」画面で「ルート3776」と検索する。
  3. 「参加する」ボタンを押す。

道中のチェックポイントでアプリを使ってデジタルスタンプを集め、完走後に富士市へ申請することで、立派な賞状と記念バッジを受け取ることができます。

登山ルート図と全体概要

まずは全体像と、設定されているすべてのチェックポイントの位置関係を把握しましょう。

富士登山ルート3776公式HPに加筆
士登山ルート3776公式HPに加筆

ルートは大きく分けて「ロードセッション(約32km)」と「山岳セッション(約10km)」に分かれます。

  • ロードセッション(起点〜旧料金所):約32km・標高1,500mまで
    市街地からスタートし、ひたすら舗装路を登ります。最後の7kmほどは富士スカイラインを歩きますが、車の交通量が多くストレスを感じやすい区間です。
  • 山岳セッション(旧料金所〜富士山頂):約10km・標高1,500m〜3,776m
    標高1,500mの旧料金所からいよいよ山道に入ります。

何泊で挑む?(1日完走・1泊・2泊・3泊の比較)

富士市が推奨する標準的な日程は「3泊4日」です。挑戦者の体力やスタイルに合わせて日程を選ぶことが成功の鍵になります。

日程プラン対象者・特徴リスク・注意点宿泊先
1日(日帰り/徹夜)超脚力のあるトレイルランナー向け高山病のリスクが跳ね上がり、ナイトセッションが長いため非常に危険。なし(宿泊なし)
12日頃から走り慣れているランナー、トレイルランナーにお勧めロード区間を初日に一気に稼ぎ、山小屋で1泊。1泊目: 富士宮口6合目(雲海荘・宝永山荘)
23日(一番おすすめ)一般的な登山者に最もお勧め標高順化をしながら無理なく歩け、景色やグルメを楽しむ余裕が生まれる。1泊目: PICA表富士

2泊目: 富士宮口元祖7合目
34日(富士市推奨)登山をされない方・観光や旅をじっくり楽しみたい方向け体力に不安がある方でも、ゆとりを持って「Sea to Summit」を味わえる。1泊目: よもぎ湯(エスプラットフジスパーク)など

2泊目: PICA表富士

3泊目: 富士宮口6合目(雲海荘・宝永山荘)

なぜ「1日(日帰り)」はお勧めしないのか?

1つ目の理由は体力の限界と高山病リスクです。約32km・8時間の過酷なロード歩きで脚を消耗した状態から、一気に標高差2,200mを登るため、高山病のリスクが跳ね上がります。

2つ目の最大の理由は「夜間の入山規制」です。現在、富士山では弾丸登山を防ぐため、全ルートにおいて夕方(14時〜16時)から翌朝3時にかけて夜間入山規制が実施されています。この時間帯は山小屋の宿泊予約がないとゲートを通過できません。そのため、夜通し歩き続ける1日での完走は、現在のルールでは実質的に不可能に近い状態となっています。

補給ポイント・水場・宿泊場所リスト

食料や水切れを恐れるあまり荷物を持ちすぎると体力が削られます。海抜0mからのアプローチだからこそ、事前の補給計画が不可欠です。

【最終のコンビニ補給】

ルート上にはいくつかのコンビニがありますが、山に入る前の最終補給ポイントは「よもぎの湯(12.4km地点)」の手前にあるミニストップやファミリーマート、セブンイレブンです。山頂まで残り30kmほどありますが、ここが最後の本格的な補給点となるため、しっかりと準備を整えましょう。

私はミニストップでパフェを食べて小休止し、35℃を超えるロード歩きで熱くなった体をクールダウンしました。また、店内手作りの大きなおにぎりを購入し、山岳セッションでのエネルギー補給に充てました。

▼ 山に入る前の最後のミニストップ(富士総合運動公園店)

🔗Googleマップ:ミニストップ 富士総合運動公園店

▼ 山に入る前の最後のコンビニ(セブンイレブン 富士市大渕八王子店)

🔗Googleマップ:セブンイレブン 富士市大渕八王子店

【最終の水分補給ポイント】

17km付近にある「NINOMARU Village」が最後の貴重な給水ポイント(自販機あり)となります。ここから先、6合目の山小屋まで飲料を補給できる場所はほぼありません。十分な水分を担いで挑みましょう。

▼ 最後の貴重な給水ポイント

🔗Googleマップ:NINOMARU Village(静岡県富士市大淵4632-5)

なお、PICA表富士には自動販売機がありません。フロントで水分を購入することは可能ですが営業時間が限られているため、宿泊しない場合はあてにしない計画をおすすめします。

トレッキングポールの積極的活用のすすめ

富士登山ルート3776のような長距離のロード歩きや登り坂が続く舗装路では、トレッキングポール(ストック)を有効に使うことで脚の負担を減らし、長時間歩き続けることが可能になります。

しかし、コツを知らないまま使っていると腕がすぐに疲れてしまったり、逆に脚の負担になってしまうこともあります。疲労を最小限に抑えながらスイスイ登る・下るためのコツを解説します。

【上り坂】舗装路を効率よく進む使い方

トレッキングポールを前に突きすぎると、腕の力を使ってしまいバテる原因になります。さらに、前への推進力が得られないというデメリットもあります。

  • 「斜め後ろ」へ突く: 肘は90度以上に上げず、普段歩くときと同じ腕振りが理想です。腕が前に来た時にポールを地面に着け、腕を下げる力を前方への推進力に変えます。
  • ストラップの活用: スキーのストックのようにストラップに手首を預けて持ちます。グリップを強く握り込みすぎないことで、腕の握力を極力温存できます。
  • ラバーキャップの装着: アスファルトやコンクリートの舗装路を歩く際は、ポールの先端(石突)に必ずラバーキャップ(ゴムキャップ)を装着しましょう。

【登頂記】海抜0mからの富士1日登山

私が実際に辿った「富士塚〜剣ヶ峰〜御殿場口」の1日登頂記録です。

【スタート地点へ】東京駅〜吉原駅

東京駅6時30分発の「こだま号」に乗車する。お盆休みの初日ということもあり、東京駅は今までにないレベルでごった返していた。車内で早速、東京駅でなんとか購入できた「恵比寿 焼肉チャンピオン」の「和牛焼肉弁当」を食べる。6時台の新幹線で焼肉弁当をがっつくように食べるおじさんの姿は、周囲に見当たらない。しかし、今日はとにかく頑張る日だ。エネルギーを体いっぱいに充填し、歩き始める準備を整える。

新幹線を三島駅で下車し、東海道線へと乗り換える。連休初日で青春18きっぷの旅行者も多いのか、電車は満員であった。脚の筋肉を温存しておきたかったのだが、吉原駅まで立ちっぱなしを余儀なくされる。車窓からは富士山がチラチラと見えた。今日は良い天気だ。暑すぎるのは厳しい条件ではあるが、雷雨の心配がない予報なのは救いである。

そして7時50分、吉原駅に降り立つ。近いようで遠く、遠いようで近い富士山がくっきり見えて、一気にテンションが上がった。

【スタート】吉原駅〜鈴川の富士塚

吉原駅に到着した時点から、すでに厳しい暑さと旅の長さを予感させる空気(最高気温は35℃超え)が漂っていた。駅から徒歩10分ほどの場所にある「鈴川の富士塚」を、今回の挑戦のスタート地点とする。

富士塚の小さな富士山に登ってみると、これから目指す富士山がバッチリとその姿を現していた。見上げればあまりにも遠く、思わず気圧されそうになる。

ここで最初のスタンプを押した。リュックにゼッケンをしっかりと装着し、熱中症への警戒を胸に抱きながら、いよいよ海抜0mからの長い一歩を踏み出した。

【スタートから8時間】長すぎる32kmのロードセッション

次のチェックポイントである「よもぎの湯」を目指す。 最初は市街地を進む。アーケードのある道や商店も多いが、午前9時前のため開いている店はなく、ひたすら足を前に進めた。

12.4km地点にある「よもぎの湯」の手前には、ミニストップやファミリーマート、セブンイレブンといったコンビニが並んでおり、貴重な補給のチャンスとなる。2時間近く歩いたところでミニストップに立ち寄り、パフェを食べて小休止。35℃を超えるロード歩きで熱くなった体をクールダウンした。また、店内手作りの大きなおにぎりを購入し、夕方から夜間にかけてのエネルギー源として確保した。

ミニストップから2つ目のチェックポイントである「よもぎの湯」までは2.4kmだ。まっすぐ続く道路をじわじわと登っていく。道端には茶畑もあり静岡県らしい風景が広がるが、残念ながら富士山は雲に覆われてしまった。

スタートから3時間弱で「よもぎの湯(標高370m)」に到着。パフェ休憩を含めても時速4kmを超えるペースで歩けており、順調である。 ここからは、2車線の歩道がない道を歩いていく。路肩は広く交通量もさほどないため、ストレスは感じない。 交差点を直進すると1車線の道となり、交通量はグッと減る。ヒノキの森の中、曲がりくねった道を登っていく。 途中、17km付近にある「NINOMARU Village」が最後の貴重な給水ポイントとなる。ここの自販機で飲料を購入するが、あまりの喉の渇きに買った2本をその場ですぐに飲み切ってしまった。ここから30km先の6合目の山小屋まで、飲料の補給はできないと考えておいたほうが良い。

T字交差点に差し掛かる手前に、3つ目のチェックポイントである「ふじひのきパーク(標高950m)」がある。見落とさないよう注意が必要だ。

ここからは、横にまっすぐ続く2車線道路(防火帯を兼ねている)を進む。斜度は緩やかで交通量も少ないため、しばし足を休めながら登っていく。途中、アナグマが目の前を横切っていった。運が良ければ鹿に遭遇することもある。

富士スカイラインとの交差点を右折し、1kmほど歩くと次のチェックポイント「PICA表富士」に到着する。標高1,100mとなり、これで全体の3分の1近くを登ったことになる。スタートから27.2km地点、残りの距離は約15kmだ。

続いて、登山口(0合目)である「富士スカイライン旧料金所跡」を目指す。そして約8時間をかけ、標高1,500mにある旧料金所までの約32kmのロードを歩ききった。特に最後の7kmほど続く富士スカイラインの車道歩きは、絶え間なく車が行き交うため緊張感が続き、精神的にもかなりの負担となった。

【夕方〜23:52】山岳セッション〜夜の剣ヶ峰へ

標高1,500mの旧料金所を過ぎ、ようやくアスファルトのロードから解放されて待望の山道へ足を踏み入れた。そこに広がっていたのは、北八ヶ岳を彷彿とさせるような、しっとりと苔むした美しい樹林帯の景色であった。 途中でトレラン風のグループに抜かれる。彼らは6合目の山小屋に宿泊するという。普通は少なくとも1泊でチャレンジするのが望ましいのだろう。しかし、自分は数日前にこのチャレンジを思い立ったため、「山の日」の山小屋予約は困難であった。そこで、どこかで大休止をして仮眠を取るつもりでいた。

登山道は広葉樹林帯から松林へと変わっていく。

そして森林限界を越えると、宝永噴火口の横にたどり着いた。 移り変わる夕暮れの景色を眺めつつ、晩御飯をゆっくり食べる。 大休止して仮眠を取ろうと思ったのだが、ロードから解放された喜びもあり、トレラングループと同じペースで歩いてしまったため、たくさんの汗をかいて体が冷えてしまった。仕方がないので、冷えない程度のペースで山頂に向けてゆっくりと歩き始めることにした。幸いにも余力はあった。

スタートからここまで10名ほどの登山者にしか会わなかったが、6合目で5合目からの登山道に合流したとたん、100名以上の登山者と遭遇した。「やっぱり山の日なんだ」と実感する。そして、さすがの富士山である。

6合目でスタンプをもらい、一般的な富士登山ルートへ入る。 途中、リュックに付けたゼッケンを見た父娘の登山客に温かい声をかけていただき、大きな励ましをもらった。やがてあたりは完全な夜闇に包まれ、ふと振り返ると、月が出ていないクリアな夜空に富士市内の夜景が宝石のようにきらめいていた。人工の光の向こうには満天の星が広がり、登りながら何度も美しい流れ星を目撃することができた。

海から歩いてきた疲労なのか、眠気なのか、高山病なのか、さまざまな要因が混ざり合った状態となりつつも、一歩一歩標高を上げていく。いくつかの鳥居をくぐり抜けて、ようやく山頂に到着。最後のスタンプをゲットした。

そこから剣ヶ峰を目指す。最後の登りが急できつい。そしてついに23時52分、日付が変わる直前に標高3,776mの剣ヶ峰に到達した。日中の混雑が嘘のように深夜0時の山頂はひっそりと静まり返っており、その静寂があまりに深く、少し怖さを覚えるほどの空間であった。大の字に寝転がって流れ星を眺めた。

【翌朝】下山:宝永山のご来光と大砂走り

剣ヶ峰で長時間流れ星を見ているわけにはいかない。寒すぎるのだ。ダウンジャケットやレインウェアなど、持っている装備をすべて着用する。下界の35℃以上との激しい寒暖差を実感した。 体が冷えてきたため、お鉢巡りをすることにした。頭痛もあり朝まで時間もあるため、ゆっくりと歩く。 吉田口の山頂に到着すると多くの人がいたが、疲れや寒さ、高山病で誰もが辛そうであった。自動販売機で600円のコーラを買って飲む。疲れた時のコーラは本当に効く。元気は出たものの寒いため、御殿場口ルートで下山することにした。一番空いているルートであることと、大砂走りで思い切り走って下りたかったからだ。

標高3,000mあたりまで下りてくると、頭痛がスッと消えていった。そして脚の疲れも引き始めていく。あの体調不良は単なる歩行疲労ではなく、高山病であったことが分かった。標高3,000m超という環境の厳しさを体で実感した。 夜明けまでまだ時間がある午前2時50分、7合5勺の砂走館の前で休憩を取る。ベンチで30分ほどうとうとしたが、寒さで目が覚めた。仕方がないので宝永山まで高度を下げ、ご来光を待つことにした。日の出を待つ間、富士山と周囲の色合いが刻々と変わっていく。

あいにく雲が出ており、宝永山からの直接のご来光は見られなかった。諦めて砂走りを走り下りて下山を開始した。

しばらく下っていくと、雲の合間から神々しいご来光が差し込んできた。

どこまでも続いていくような砂走りの道。その先には箱根の山々が見える。 箱根の外輪山からは雲がこぼれ落ちており、幻想的な光景が広がっていた。とても日本国内の風景とは思えないほど神秘的であった。

ロード歩きで完全に終わりかけていたはずの脚であったが、砂を蹴りながら駆け下りるうちに不思議と痛みが引き、エネルギーが復活していく感覚があった。大パノラマの景色に圧倒されながら一気に駆け下り、午前5時40分、無事に下山を完了した。21時間30分の大冒険であった。

ヤマレコの記録

詳細なルートの参考用として、ヤマレコの記録を載せておきます。

おわりに

最近、富士登山ルート3776を仕事で通る機会が多々ありました。多くの方々が、歩いているのを見て、実際に歩いている方々と話してみて、富士登山ルート3776の登頂記をブログに書いてみようと思いました。

富士登山ルート3776を歩き切った達成感はすさまじく、心からお勧めできるルートです。ただ、ロード歩きを経て「やっぱり山歩きが良いな」と改めて思いました(笑)。

これから挑戦される方は、入山規制のルールをしっかりと確認し、1泊2日や2泊3日のゆとりあるスケジュールで山小屋を予約して挑むことを強くお勧めします。

ぜひ、安全第一で究極の「歩く旅」を楽しんできてください。

最後に、実際に歩いたルートの標高図です。

富士山らしい美しい裾野の曲線美と、宝永山の出っ張りがしっかりと形になって残っていました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました